春咲きエリカ
(1)エリカ・アルボレア(Erica arborea)
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エリカ・アルボレアはツリーヒースと呼ばれ、条件が良ければ高さ5mにも達する常緑中木で、地中海沿岸部一帯とカナリア諸島、北部及び東部アフリカに自生します。多くの品種は氷点下7℃〜氷点下1℃ですが、氷点下18℃〜氷点下12℃まで耐えるものもあります。明るい緑色の葉は3〜4輪生で針葉樹のようになめらかで下方に溝があります。若い枝には枝分かれした多くの毛を持ちます。ベル形の花は春に咲き灰白色で蜂蜜のような香りがあります。アルカリ土壌でも耐えますが、酸性土壌で良く成長します。若木の時は、枝がばらけやすいため早い時期に刈込みを行い形を整えます。降雪により損傷を受けますが、再び根元から葉を出します。

 
夏咲きエリカ
(1)エリカ・キリアリス(Erica ciliaris)

エリカ・キリアリスはイギリス南部から南西部にかけた地域、北西フランス、西アイルランド、ポルトガル、北西スペイン、北西アフリカに自生します。キリアリスの葉は卵形で、葉表は灰緑色ないし暗緑色、葉裏は白色で、ふつう3輪生をなし腺状で狭い。花は長い総状花序で、夏の中頃から秋の中頃まで開花し、ライラックピンクで花先は鋭くしぼれています。大気汚染に影響を受けやすく、都市部ではあまり成長が良くありません。移植を嫌います。日の当たる湿った酸性土壌を好み、氷点下12℃〜氷点下7℃まで耐えます。

 
(2)エリカ・キネレア(Erica cinerea)

エリカ・キネレアはコンパクトな常緑低木で、南西ノルウエーから南ポルトガル、北西イタリアまでの西ヨーロッパに自生します。また、リビアからも自生することが報告されています。アメリカのマサチューセッツ州のナンタケット島では帰化をしています。キネレアの葉はふつう暗緑色で細長く、葉の縁が外側に強く巻いています。ベル形の花は白、ピンク、パープルで、夏に多くの花をつけ、良い香りがします。他のヒースに較べ繊維状の根でないため、移植は困難です。酸性土壌で開かれた日当たりの良い場所を好み、湿った場所を嫌います。乾風(寒風)に対する防護を行えば氷点下18℃〜氷点下12℃にも耐えます。

 
(3)エリカ・テトラリクス(Erica tetralix)

エリカ・テトラリクスは 常緑低木で、周北極から北スペインにかけ西ヨーロッパ全域に分布します。葉は狭く腺状で灰緑色です。葉裏は白く、十字をなし4輪生です。淡いピンクで壺形の花は口先が絞れており、頂生の散形花序をもちます。開花時期は夏の中頃から秋の中頃です。ふつう野生種は沼地などに生育しますが、庭園などで使用すると乾燥にも耐えます。酸性土壌を好み、特に湿った土壌を必要とします。耐寒性は氷点下34℃〜氷点下29℃まで耐えます。

 
(4)エリカ・マッカイアナ(Erica mackaiana)

エリカ・マッカイアナは匍匐しながら広がる常緑低木です。西アイルランドや北スペインの沼地のような湿った場所に自生します。葉は皮針形を呈し、暗緑色で裏側は白色です。花は壺形で口先が絞れています。色は明るいピンク色で夏から秋にかけて開花します。白色種や八重咲き種もあります。アイルランド産のマッカイアナはめったに高さ30cmを越えるものはなく、防護を施せば氷点下18℃〜氷点下12℃まで耐えます。スペイン産のものは生育が旺盛で高さも高くなります。耐寒性は氷点下12℃〜氷点下7℃から氷点下18℃〜氷点下12℃まで幅があります。すべて湿った酸性土壌を好み、グランドカバーに適しますが、乾燥状態ではうまく生育できません。植物は根から新しい枝を出し更新していきます。

 
(5)エリカ・ヴァガンス(Erica vagans)

イギリス、コーンウォール州のリザード・ペニンスラ、フランス北西部のブルターニュや北スペインで自生します。葉は暗緑色で細長く小さい。花は鐘状で円柱形の総状花序、その色はピンク、モーブ、ホワイトなどあり、夏の中頃から秋の中頃に開花します。蝶や羽虫などが好んで集まります。酸性土壌でもアルカリ土壌(マグネシウムの豊富に含んだ土壌)でも良く生育します。強剪定にも十分応えてくれます。氷点下29℃〜氷点下23℃に耐え、枯れた花を残しておけば、冬にはこの赤褐色の魅力的な花を楽しめます。

 
(6)エリカ・スツアルティー(Erica × stuartii)

エリカ・スツアルティーは湿った酸性土壌を好むエリカ・マッカイアナとエリカ・テトラリクスとの間で自然に生じた交雑種です。アイルランドのコネマラとドネガル地方の固有種で、他の地域で唯一マッカイアナとテトラリクスが共存する北西スペインでは、スツアルティーは見あたりません。その特性や栽培状態はアイルランド産のマッカイアナに似かよっています。スツアルティーはすべて繁殖力はありません。春には、明るい色づいた新葉を出します。耐寒性は氷点下18℃〜氷点下12℃まで耐えます。

 
(7)エリカ・ワトソニー(Erica × watsonii)

エリカ・ワトソニーはエリカ・キリアリスとエリカ・テトラリクスとの間で自然に交雑された常緑低木で繁殖力を持ちません。1831年イギリスのコーンウォール州で最初に発見されました。その形態や特性はかなり幅があり、一般的には開花期間が長く、春に明るく色づいた新葉をつけます。酸性土壌を好み、耐寒性は氷点下18℃〜氷点下12℃です。

 
(8)エリカ・ウイリアムシー(Erica × williamsii)

エリカ・ウイリアムシーはエリカ・ヴァガンスとエリカ・テトラリクスとの間で自然に交雑された常緑低木で繁殖力を持ちません。1860年イギリスのコーンウォール州リザード・ペニンスラで最初に発見され、そのほかの場所では見つかっていません。すべてが春の生育時にどのヒースよりも明るい黄色の新葉をつけます。たいていのアルカリ土壌で生育します。耐寒性は氷点下29℃〜氷点下23℃です。

  
冬咲きエリカ
(1)エリカ・カルネア(Erica carnea)

エリカ・カルネアは非常に耐寒性のある常緑低木で、ヨーロッパの高山帯に自生し、横に広がる特性をもちます。4輪生で細長い葉を持ち、管のように曲がっています。花は晩冬から初春に咲き、ふつうピンク色です。開花時期は環境により著しく異なり、穏やかな場所では、寒い場所にくらべ2ヶ月も早く咲きます。一般的には、6〜8週間花を咲かせてくれます。酸性土壌を好みますがアルカリ性土壌にも適応し、少々の日陰にも耐えます。わずかな例外を除いて全ての品種は矮性で、強い刈込みを必要としません。カルネアの蕾は7月には形成されますので、刈込み時期には注意が必要です。花色が褪せたらすぐに刈込む方が無難で、植物の縁と先端部を軽く刈込みます。全てのヒースの中で最も耐寒性のある種類のひとつで氷点下34℃〜氷点下29℃まで 耐えます。

 
(2)エリカ・エリゲナ(Erica erigena)

エリカ・エリゲナは常緑の低木で、柔らかな茎を持ち樹高2.5m葉張り1mにも達します。暗緑色の細長い葉を持ち、花は濃いライラック色のベル形で、冬から春にかけて開花し、蜂蜜の香りがします。エリゲナは西アイルランド、スペイン、ポルトガル、モロッコのアトラス山に自生します。氷点下18℃〜氷点下12℃まで耐えますが、防護を施せば氷点下34℃〜氷点下29℃でも生育は可能です。この場合、寒さで損傷を受けますが、根元より新芽を出し回復します。たいていの土壌で生育可能で、低い生垣などに適します。

 
(3)エリカ・ダーレーエンシス(Erica × darleyensis)
エリカ・ダーレーエンシスはエリカ・カルネアとエリカ・エリゲナとの交雑種で、20世紀の始めにイギリス、ダービーシャー州のダーレー・デイルの苗圃で発見されました。この叢林状の常緑低木は高さ70cm、葉張り80cmにもなります。エリカの中で最も成長が早く、どんな土壌にも適応し特に雑草を被圧するのに優れています。これらの多くの交雑種は繁殖力がありません。春に開花を迎え、その期間は長い。新葉は色づくものが多い。氷点下18℃〜氷点下12℃まで耐えます。

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